長かった冬もそろそろ終わり。球根からつぼみが顔を出し、ハーブが花芽をつけて春一歩前の気配が漂う。ベランダに出て剪定ばさみを手に植物の手入れをしていて、ふとこんなことを考えた。
命にかかわる病気を経験するのは「
園芸に親しむ人ならご存知と思うが、摘心は茎の先端(成長点)を摘んで、枝分かれを促す行為だ。結果、枝数が増えてこんもりと茂った株になり、花も実も収穫が増える。
しかし、摘心するのは勇気がいる。必要なことだとわかっていても、今日芽が出るか明日出るかと見守ってきた苗の先端を自ら切り取ってしまうのだから。
それでも意を決してエイヤッと摘み取る。
あのまままっすぐ、自然のままに高く伸びていくのも素晴らしかったと思うけど。
切ってしまった芽も、割れた皿も、病気になる前の自分も、もうもとには戻らない。時の流れは戻せない。やり直しはきかないのだ。
だけど。いきなり先を摘まれて、わたしの中で行先を失ったものが、考えて新しい芽を伸ばす。枝葉を増やし、横へ広がり、大きく成長してたくさんの花を咲かせ、実をつけるかもしれない――。