どうなってんの? マントル細胞リンパ腫闘病記

2015年3月。脾臓の腫れから発覚した悪性リンパ腫。脾臓摘出・生検の結果、判明した病型はとりわけ手ごわいといわれ、 標準治療も定まっていないマントル細胞リンパ腫(MCL)だった…。 自覚症状のなさと医師のシビアすぎる診断とのギャップに頭の中はチンプンカンプン。いったい全体わたしの身体どうなってんの? MCLと闘う50代オバさんの記録です。

 

1. 不意打ち

 

入院中、N医師に確定診断が出るまで退院後1か月以上かかる、と言われていた。もともと生検に時間がかかる上、この病院に月1で来院する病理の権威の先生にも診てもらうため、とのことだった。

時間はかかっても、ていねいに診てもらえるのは何よりだ。

脾臓摘出前の診察で、N先生には
「生検しないと正確にはわからないが、おそらく脾辺縁帯リンパ腫ではないかと思います」と言われていた。病気の進行が遅いので、脾臓を取ったあとは経過観察になるだろう、病気が進行したときに抗がん剤治療をしましょう、とも。

わたしとしても脾臓がかなりゆっくりペースで大きくなったという実感があり、脾臓の腫れ以外に自覚症状はまったくなかった。脾辺縁帯リンパ腫について調べてみても矛盾する記述はなく、N先生の話はストンと納得できた。
脾辺縁帯リンパ腫であれば、進行すれば濾胞性リンパ腫として治療することになる。治癒は難しいが、すぐに命にかかわるということもなさそうだ。病を抱えつつも、来月からは仕事にも復帰して、当分は日常を取り戻せるだろう。確定診断は一応の確認、くらいの軽い気持ちでいたのだった。

6月下旬。いよいよ確定診断の日だ。病院に行くと、N先生の診察室に
『本日N医師は休診のためT 医師が代診します』
という札がかかっている。あらー、N先生病気かな。確定診断はN先生から聞きたかったな…。残念に思いながら、診察室に入る。

初めて対面したT医師は血液内科の部長だが、とても気さくな、感じの良い医師だった。
まず、家族構成や病歴などを確認される。ずいぶん細かいところまで確認され、話が周辺をぐるぐるまわる感じでなかなか本題に行かないなぁ。ちょっとヘンだな、と思ったところで。
「今日はひとりで来たの?」
T先生が悲しそうな顔でわたしを見た。
ああっ、これは典型的にヤバい展開だ。嫌な予感しかしない。

「今日は型の確認だけだと思ったもので…。先生、脾辺縁帯リンパ腫じゃないんですか?」
「それがね、違うんだよ」
引き続き、悲しそうに視線を落とすT先生。
このとき、ふと先生の前のモニターに映し出されていた文字が目に入った。病理の医師による見解とおぼしき文字が。
『…Cyclin D1 陽性…よってマントル細胞リンパ腫と診断される』
マントル? えっ!?

「マントル細胞リンパ腫、っていうんだよ」マントルって… 

「たしか、治療が難しくて予後も悪いんですよね!?」

マントル細胞リンパ腫について、その程度の知識はあった。わたしと同じ非ホジキンリンパ腫のB細胞性で、リンパ腫を調べているとよく目にする病型だったからだ。しかし、その印象はとても悪く、自分とは関わりのないもの、として切り捨てていた。T先生は
「そう、マントル細胞リンパ腫は手ごわい病気です。症例も少ないので、今、ぼくらも一生懸命調べているところなんだよ」

若い研修医を動員して海外の文献含め集めているのだと、プリントした資料の束を見せてくれた。つまり、この病院には治療実績がない、ということだ。もしかしたら高齢の患者はいたかもしれないが、積極的な強い治療に耐えられる若年層(一般的に65歳以下)の患者はこれまで来なかったのだろう。
今のところ考えられる治療法は、Hyper-CVAD/MAという強い化学療法→自家造血幹細胞移植。通院は無理。入院治療になる。この病気はもともとはゆっくりしているけど、進行しだすと速くなる。
「現在、なにも自覚症状がないんですが…」と言うと、
「症状は必ず出てきます。あまり時間の猶予はありません」と硬い表情の T先生。ゆっくり構えてはいられないので、一か月以内に治療に入るのが望ましい、と。

わたしがノートに『ハイパーCバッド』と書いていると、先生は
「それはね、こう書くんだよぉ」といって、わたしのノートに直接 

    Hyper-CVAD+リツキサン/MA(キロサイト、メソトレキセート)

と書いてくれた。温かみのある、良い医師だ。
できることなら、この病院で治療を受けたい。
しかし、症例が少なく手ごわい病気ならば、病院選びは慎重にしなければならない。

「セカンド・オピニオンもしたほうが良いでしょう。資料や紹介状はすぐに用意しますよ」とT先生。
「ぜひ、お願いしたいと思います」
翌週の診察までにセカンド・オピニオン先を決めて、資料を揃えてもらうことになった。


診察を終え、初夏の日差しを浴びながら駐車場に向かう。
リンパ腫、とはじめて告知されたときよりも、ある意味深刻な事態だと感じていた。

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