どうなってんの? マントル細胞リンパ腫闘病記

2015年3月。脾臓の腫れから発覚した悪性リンパ腫。脾臓摘出・生検の結果、判明した病型はとりわけ手ごわいといわれ、 標準治療も定まっていないマントル細胞リンパ腫(MCL)だった…。 自覚症状のなさと医師のシビアすぎる診断とのギャップに頭の中はチンプンカンプン。いったい全体わたしの身体どうなってんの? MCLと闘う50代オバさんの記録です。

 

2. 難敵

 

やっと敵の正体が見えた。それは予想していたよりずっと難敵であることがわかった。家に帰るなり、すぐに手持ちの本やネットでマントル細胞リンパ腫について調べた。

 

  • 日本では悪性リンパ腫の約 3% を占め、高年層の男性 (男女比2:1) に多い

   → 3% のうち、男女比 2:1 なら女性は 1% ってこと?

  • 患者の5年生存率は30%未満、予後不良の病型
  • 標準治療が確立していない
  • 骨髄、消化管(食道‐胃‐小腸‐大腸)に浸潤する頻度が高く、診断時に80%以上は進行した病期(Ⅲ、Ⅳ期)である

   →わたしも骨髄に浸潤しているのでⅣ期。

  • 脾腫が4割弱に認められ、腹部膨満感が主症状になることもある

   →まさにわたしがこのパターン。

 

ある専門書には「脾濾胞辺縁帯リンパ腫」との鑑別が必要、とあった。症状や手がかりが似ているからだろうか。もし、脾摘・生検をしていなかったら、今もマントルであることはわからず、もっとマズい状況になっていたかもしれない。

それにしても、改めてわかったのは、相当によろしくない病気であるということ。5年生きられるかどうかわからない、というのはシビアな話だ。「最も治療が困難な病型」のように書いてあるものもある。ただしこれは、高齢者に多い病型であることと、進行して見つかるから、という理由もある。症例が少なくて、治療法がなかなか確立できないことも大きいだろう。
とにかく、調べれば調べるほど頭を抱えることになった。

しかし、困ってばかりではいられない。来週の診察までにセカンド・オピニオン先を決めて、予約をとっておかないと。情報を集め、いくつかの候補を挙げてみた。

まず、都内のKがん病院。がん治療の総本山とも言われ、治験なども盛んにやっている。病理診断に関して信頼性が高いので、診断を含むセカンド・オピニオンならこの病院だろう。地元のK病院のT医師も自分の病院の病理診断にはしっかり自信を持っていたが、なにしろ稀な型なので、再度調べるのも悪くないと思ったのだろう、この病院の名を挙げていた。
そこで、まず、Kがん病院に電話をかけてみた。要件を述べると、すぐに担当に電話をまわされた。担当の人はこう言った。

「うちには十分な治療実績があります。今診てもらっている主治医の先生にはセカンド・オピニオンではなく、初診を踏まえた紹介状を書いてもらってきてください。あまり猶予はなさそうですから、1週間後に予約を入れておきます」

展開が早すぎてちょっと怯んだが、悪い話ではないことは確かだ。治療実績があり、すぐに診てくれるというのだから。とにかく初診を受けることにして、手続きの詳細や持参する資料について確認して電話を切った。

どうしよう。このままだとKがん病院で治療をすることになるかもしれない。それでほんとに良いのだろうか。他にも候補を三つ挙げていて、まだ当たってみてもいないのに。
Kがん病院はどちらかというと研究所的な印象が強い。患者本位の治療をしてくれる病院なのだろうか。他の候補にも電話をかけて様子を伺ってみようか。

しかし、Kがん病院についてさらに調べてみると、専門性の高い医療スタッフが揃い、設備も素晴らしいようで、患者の評判も上々である。なによりマントル細胞リンパ腫のように症例の少ない病気の場合、できるだけ多くの治療法から自分に合ったものを選べたほうが良い。その点ではKがん病院は申し分なさそうだ。

初発の治療はとにかくしっかりした病院で、専門性の高い医師に診てもらうべきだ。後のことは後で考えれば良い。すぐに受け入れてくれる、と言っているのだから、まずはここに行ってみよう。そして病理診断をしてもらおう。そう肚を決めた。

翌週の頭、地元のK病院の診察日。主治医のN医師はその週も病気で休診。T医師の代診だった。

T先生はまず、悪性リンパ腫腫瘍マーカーである可溶性インターロイキン2受容体(sIL2‐R)の検査結果を教えてくれた。手術前は8,000(!)だったのが先週は2,000になっている。かなり減ってはいるが、基準値はMAX500なので、まだまだ高値だ。
セカンド・オピニオンはどうしますか?と訊かれ、Kがん専門病院とのいきさつを説明する。T先生はすぐに紹介状や病理標本、画像などの資料を揃えましょう、と言ってくれた。
わたしは迷いながらもこう言った。

「先生、もしKがん病院で治療することに迷いが生じた場合は、また別の病院への紹介状を書いていただけるのでしょうか?」
T先生はわたしの顔を見ながら、きっぱりと言った。
「もちろんですよ。あなたが診て欲しい病院で治療をするべきです。命がかかっているのですからね。そのための準備はいくらでもやりますよ。それが僕らの仕事ですから」

なんて良い先生だろう。地元の病院にこんな医師がいることがうれしく、誇りに思った。できることなら、この病院で治療を続けたかった。もっと症例の多い型だったら迷わずそうしていただろう。
主治医のN先生に会えぬまま転院になってしまうのも残念だ。
しかし、ここはけじめの時だ。
T先生に丁寧にお礼を言って診察室を出た。

 

 

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