どうなってんの? マントル細胞リンパ腫闘病記

2015年3月。脾臓の腫れから発覚した悪性リンパ腫。脾臓摘出・生検の結果、判明した病型はとりわけ手ごわいといわれ、 標準治療も定まっていないマントル細胞リンパ腫(MCL)だった…。 自覚症状のなさと医師のシビアすぎる診断とのギャップに頭の中はチンプンカンプン。いったい全体わたしの身体どうなってんの? MCLと闘う50代オバさんの記録です。

 

1. Kがん病院 初診

 

2015年7月2日(木)。Kがん病院、初診。

紹介状や病理標本などの資料一式を受付で提出し、外来の診察室へ向かう。大きな病院のわりに、あまり待たされない。受付のシステムがよくできているように感じた。セカンド・オピニオンも含めると相当な患者数だからこそ、システムも練られているのかもしれない。

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名前を呼ばれ、診察室に入る。

診察デスクの前に担当のM医師が座っていた。その奥にボブヘアの看護師さんがひとり控えていた。

M先生の第一印象は "あったま良さそう!" であった。キリッと上がった眉、まだ若そうだが絵に描いたようなエリート、に見えた。

 

軽い問診のあと、横になり触診。頸、腋、鼠径部など。

あれ、まるでナマズ先生みたいだ――。ナマズ先生とは家の近くの夫のかかりつけ医だ。わたしも何度か診てもらったことがあるが、触診が的確でスムーズ、しっかり病気を見つけて治療してくれる地元の名医である。M先生の触診はナマズ先生と同じでパッ、パッ、パッ、とためらいがなく、なにかあれば見つけてくれそうな感じ。なんだか妙に安心した。

触診後、先生は理路整然とマントル細胞リンパ腫(以下MCL)について説明をはじめた。患者の理解力を確認しながら、丁寧にわかりやすく。ひととおり聞いてから、わたしは質問内容をまとめた紙を出し、ひとつひとつ聞いていった。

 

・この病院でのMCLの治療実績は?

 ――年間7~8人ぐらいですね。

 (結構いるんだな)

 

・生存期間って、どこから数えるのでしょうか?

 ――診断時からです。

 (そうなんだ!発病からかと思ってた。でも、いつ発病したかなんて正確にはわからないもんね)

 

・治療の効果がなく悪化した場合、どこまで診てもらえるのでしょうか?

 ――この病院には緩和ケア病棟がありません。治療ができなくなった時点で転院していただくことになります。

 (そりゃそうだ。他の大きな病院でも同じだもんね)

 

答えにくいことを聞いて申し訳ないかなと思ったが、M先生の言葉は明快だった 。

「よく勉強されておられるようだけど」と先生は言った。「そんなに調べて疲れませんか?」

わたしは怯むことなく言った。「でも、先生。最初にリンパ腫と診断されてから、もう4ヶ月ですよ。このご時世、本でもネットでもいくらでも調べられるのに、じっとなんかしてられませんよ」

すると、部屋の奥にいたボブヘアの看護師さんが日本人形のような髪を揺らしながら、力いっぱいブンブンと首を縦に振っているのが見えた。おお、味方がいた!

先生もうん、と頷きながらも、きっぱりと言った。

「でも、まずは本当にマントル細胞リンパ腫なのか、もしそうなら現状病気がどのくらい広がっているのか調べてみなくてはね。話はそれからです」

それはごもっとも!

先生は検査の予定を次々と入れて、次の診察の日程を決めてくれた。この日はせっかくだからCTを受けて帰ることになった。

 

診察室を出ると、さきほど味方してくれたボブヘアの看護師さんが一緒についてきて、今後の検査の複雑な手順をわかりやすく説明してくれた。そして

「郷里のお母さまには、もうお話されたんですか?」とやさしく話しかけてきた。ああ、この病院はがんの専門病院だから、患者はみな同じような困惑や悩みを抱えてるんだ。だから、初対面でこんな話ができるんだな。なんて楽なんだろう! なにかとても開放された気分だった。

 

この病院は良いかもしれない。設備が整っているのはもちろん、病院内の雰囲気がやわらかく、明るい。看護師さんも専門性が高そうだ。

エリートっぽくて最初はとっつきにくそうに見えたM先生も、ちゃんと患者を見て話をする先生で、意外とこちらもものが言いやすい。なによりこの病気の治療経験が十分にある。それに、「T先生が書いてらっしゃる通り、わたしもそう考えます」と、紹介状を書いてくれたT医師を尊重する話しぶりも心に残った。独善的な医師なら、そんなことは言わないだろう。

わたしに必要なのは、信念と共感性のある医師だ。M先生にはそれがありそうだった。

 

家に帰り、夫にKがん病院でのあらましを語る頃には「治療するのなら、この病院が良い」と心に決めていた。

 

 

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